ホームヘルパーを目指す方へ、病状に合わせた食生活の援助と料理について
ホームヘルパー(以下、ヘルパー)は高齢者の自宅に行き、家事援助として調理をする仕事又は業務があります。調理師や栄養士ではないので、一般的な家庭料理を作ればよいのです。病気のある高齢者には、その方に適した調理をする必要があります。専門的ではなくて問題ありませんが、最低限「糖尿病だから〇〇は控えよう」「骨粗鬆症で悩んでいるから〇〇を多く摂取してもらおう」と考えるケースも有るでしょう。ここではヘルパーが知っておきたい病状に合わせた食生活の援助と料理についてご紹介していきます。
病状に合わせた食生活の援助
ここでは6つの病気や病状について、食生活の注意点を紹介していきます。ヘルパーとして適切な食事を提供できるように最低限の知識として知っておくと、より安全においしく料理を食べてもらうことが出来ます。
糖尿病
糖尿病は血液中の糖分が高くなり、分解できなくなった糖分が尿として体外に排泄される病気です。血液の流れが極端に悪くなりますので、脳梗塞や失明、四肢先の壊死など様々な病気を引き起こすと言われています。糖尿病の場合は病気の進行具合によって対応が異なります。例えば、糖尿病が軽い方の場合は、出来るだけ糖分を少なくした食事をとることをお勧めします。糖分は糖質、いわゆる炭水化物ですので米やパンなども取りすぎは良くありません。カロリーを出来るだけ抑えて、食物繊維や緑葉色野菜など低カロリーのものをお勧めします。糖尿病の中度から重度の方の場合で、インスリン注射をしている場合は、インスリン血糖値の調整をするカロリーを抑えすぎた食事は危険なこともあります。血液中の糖分が低くなると低血糖症状になるからです。
高血圧
高血圧は、その名の通り血圧が高いことです。血圧が高いと、動機や息切れも引き起こしてしまいます、血管がつまりやすくなり脳梗塞などを引き起こすこともあります。高血圧の食事で注意しなければならないものは塩分です。塩分を取りすぎると、血圧が上昇しますので、塩分を適切に抑えた料理を食べもらうように心がけましょう。塩分が少ないと味がしないと言われることもありますので、カツオや昆布などの出汁を使って味気を付ける工夫もお勧めします。また、率先して食べていただきたい食事は青魚です。青魚に含まれるDHAは血液をサラサラにする働きがありますので、脳梗塞を防止しする働きがあります。
コレステロール値が高い
コレステロール値が高いと、中性脂肪の増加、それに伴い内臓系がダメージを受けます。様々な病気に繋がるのがコレステロールであるといえます。コレステロールは基本的に肉などの動物に多く含まれており、植物には含まれていません。その為野菜を多く摂取することをお勧めします。特に大豆はコレステロールを下げる働きがありますので納豆や豆腐などで積極的に取るようにしましょう。またどうしても肉料理が食べたい場合は、赤身の肉にするようにしましょう。赤身の場合は固いものがありますので、煮込み料理にして柔らかくするなど工夫をしましょう。
中性脂肪が多い
中性脂肪が多いと、それだけ様々な病気にかかるリスクがあります。メタボという言葉があるように、中性脂肪が多いことは危険であると言えます。また、中性脂肪が多い方は体重が重いことがあります。体重が重いと膝などの下半身に負担をかけてしまいますので、そういった面でもリスクが高いと言えます。中性脂肪の過多を避けるためには運動が一番ですが、食生活でも脂質を避けるなどの工夫を行いましょう。鶏肉や豚肉、牛肉などを使う場合は脂肪を取り除いてから調理をすると良いでしょう。また豚肉や牛肉よりも鶏肉や魚をお勧めします。鶏肉や魚は中性脂肪の増加を妨げることがありますので、積極的に摂取するようにしましょう。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は骨密度が低下して骨がもろくなっている状態のことを言います。少しの衝撃で骨折が考えられますので、出来るだけ改善するようにしましょう。骨を作るのはカルシウムです。カルシウムを摂取して骨を強くするようにしましょう。魚でも小魚など骨ごと食べれるような魚、干しエビやシジミなどもお勧めですし、納豆や牛乳、小松菜などもよいでしょう。またカルシウムが骨になるためにはビタミンDが必要になります。サンマやカレイ、しいたけや、きくらげなどにビタミンDは多く含まれていますので、同時に摂取することをお勧めします。食事以外には日の光に当たることもお勧めです。日の光に当たると体内でビタミンDが生成されますので、健康な食生活を送りつつ、窓辺で日に当たるなどの工夫を行いましょう。
貧血
貧血は血液中の赤血球のヘモグロビンの濃度が低くなった状態であり、立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつきが見られる。転倒などのリスクが高まることもあります。食事で、貧血を治すためには鉄分とビタミンCを取ることが効果的です。鉄分は血中のヘモグロビンを増やす栄養素ですが、ビタミンCを同時に摂取すると、鉄分の吸収率が高まります。レバーや大豆、緑黄色野菜を摂取して鉄分を補給、果物や野菜を一緒に摂取してビタミンCを摂取するようにしましょう。反対に鉄分の吸収を阻害する食品もあります。お茶やコーヒーなどに含まれているタンニンは、鉄分の吸収を阻害しますので注意しましょう。食事量が少ない方や、好き嫌いが多い方にお勧めなのは、鉄鍋です。鉄鍋の鉄が少しづつ溶け出して、体に鉄分を補給することが出来ますので、調理に鉄鍋を使用して鉄分を摂取するようにしましょう。
咀嚼が困難な人の食事
高齢者で歯が全て自分の歯である方は珍しく、何らかしらの歯の欠損が見られる方がほとんどです。中には歯が全て無い方もいます。歯の欠損がある方は、咀嚼(物をかむ力)が弱く、口に入れても食べにくいケースがあります。そういった場合ヘルパーとしてどのような配慮が必要なのでしょうか。咀嚼は物をかみつぶす動作ですので、ある程度柔らかい食事がおすすめです。食材を生のまま出すのではなく、ある程度火を入れて柔らかくしてから出すと良いでしょう。また、歯が無い方に対しては、ミキサーでペースト状にしたり、包丁で刻むことも大切であるといえます。
嚥下の困難な人の食事
咀嚼は噛む力ですが、嚥下は飲みこむ力です。嚥下力が悪い方に対してどのような食事を提供することが適切なのでしょうか?飲み込む際、基本的には食道が開いて、気管が閉じます。それによりスムーズに食事を胃まで運ぶことが出来るのです。しかし、嚥下力が悪い方は、その動きが上手くいかずに気管に入ってむせることもあります。水などサラサラとした液体の場合は、特にむせやすく気管に入ってしまうことがありますので注意が必要です。出来ればとろみのあるものを提供すると良いでしょう。おかゆや、餡のかかったものを一緒に食べるとスムーズに飲み込みやすいと言えます。また、温度にも注意しましょう。体温に近いぬるめのものは特にむせやすいのです。口の中でしっかりと食べ物を認識することが誤嚥を防止することに繋がりますので、熱いものは熱いまま、冷たい物は冷たいまま食べてもらうことが大切です(やけどには注意)
食生活の援助で介護者の注意すべきこと
食生活は健康な生活を送るために食生活は非常に大切なことです。食事は生命の維持にも繋がります。しかし、ヘルパーとしては生命の維持だけではなく、食べる楽しさも実感してもらうように配慮することが大切です。栄養等ももちろん大切ですが、それも配慮しつつ楽しい食事を目指すことをお勧めします。栄養については専門的な知識が必要であれば、分からないことは栄養士に確認するなど、チームで連携をすることも必要になってきます。