介護職で働きたい方に向けて、介護のやりがいについて
介護職として働いてみたいと考えていますが、なかなか最初の一歩が踏み出せないと悩まれている方も多いかと思います。特に介護は仕事として楽しいのか、介護のやりがいなどについては、いくら求人票を見ても分かりません。ここではそのような方に対して、介護のやりがいについてご紹介していきます。介護のやりがいとはどのようなものなのか。具体的に見ていきましょう。
介護とは
まず最初に介護とはどのような仕事なのでしょうか。介護は介護が必要な方に支援を行うことですが、それは身体的な介護だけではありません。高齢者一人ひとりの特性を理解しつつ、出来る限り自立した生活をサポートするのも介護にの非常に重要なポイントの一つになります。精神的なサポートももちろんですが、手すりを配置する、適切な車いすを選定するなど環境を整えて自立した生活を送れるようにすることも必要になります。一概に介護=身体介護だけではないことを理解しておきましょう。
介護と介助の違い
介護を語るうえで欠かせないのは、介護と介助の違いです。この違いを考えた時に介護の楽しさや、やりがいが見えてくるので是非知っておきましょう。まず介助とはどのようなものなのでしょうか?介助は基本的に助けることです。例えば、重い荷物を持っている高齢者の荷物を持ってあげる、車いすで段差が超えられない方がいれば手助けをしてあげるなどが介助になります。手助け=介助と覚えておいて間違いありません。それでは介護はどのようなものになるのでしょうか。介護は先ほど述べたように自立を促す支援です。例えば重たい荷物を持っている高齢者がいた場合、単純に持ってあげるだけではなく、危ない道だけ持ってあげる、そもそも重たいものを持たないようにするために宅配業者を紹介するなども介護に含まれます。介助は手助け、介護はその人の生活を支援するという大きな違いがあります。
介護職の基本原則
介護職の基本原則を知ることは、これから介護職として働く方にとっては非常に重要なことになります。介護職の基本原則とはいったいどのようなものがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
個々の価値観を尊重する
利用者の価値観を尊重するというのは非常に大切なことです。価値観を無視した介護は介護職の独りよがりですし、尊厳を傷つける可能性もあるので、価値観を尊重するということを必ず意識して行わないといけません。また利用者一人ひとりの「個々の価値観」を尊重することも忘れないようにしましょう。例えば「高齢者は〇〇だから」「高齢者はみんな〇〇」だとひとまとめにして決めつけてしまうのは良くありません。「〇〇さんだから」と個々を意識して、価値観を大切に自己決定を尊重してあげるようにします。具体的な例を挙げていきます。ある高齢者は、物を大切にする価値観があります。しかし、この高齢者の自宅はいわゆるごみ屋敷であり、第三者から見るとごみが積まれているようにみえます。高齢者の価値観を無視して勝手にごみを片付けることはしてはいけません。その価値観を大切にしながら、安全確保、生命維持を意識して、高齢者自身が片付けられるように支援をするのが介護なのです。
常に観察し、異状の早期発見を心掛ける
介護職は医療の専門職ではありませんが、異常には最も気づきやすい職種であるといえます。なぜかというと介護職は高齢者と関わる機会が医療従事者に比べて多いからです。医療従事者は医療を行いますので、医療が必要な時にしか関わりません。対して介護職は生命にかかる介護を行うことを仕事としていますので、常に観察が出来る状況なのです。異常を早期発見し、医療に繋いで早めに対策をすることが良い介護職になるポイントであるといえます。
生きる喜びを見出せるような援助をする
高齢になると、様々な喪失体験を感じます。退職や子供の自立、配偶者の死去や友人の死去などです。それに加えて身体機能の低下も見られますので、生きる喜びということを喪失していることも多くあります。介護職として出来ることは生きる喜びを見出せる援助です。生きる喜びは些細なことで構いません。趣味を見つける、知り合いを作る、日記をつける、行動範囲が広がるなどなど、どのような事でも良いので人や社会と繋がれる「楽しいな」と思えるような援助を行いましょう。
安全を確保し、病気の予防を重視する
生命の安全というのは人間の基本的な欲求であり、自身の命の安全が確保された生活で泣ければ人は身動きが取れなくなります。行動力が低下して寝たきりになってしまうことも少なくありません。環境を整えて安全を確保していきます。また病気の予防も大切なことです。病気にならないように支援をする。具体的には規則正しい健康な食生活、運動などを支援していくことが病気の予防につながっています。病気を予防し、安全であることが自立した生活を手にいれる第一歩であるといえます。
利用者の可能性を拡げる
介護職がかかわる高齢者は何らかしら障害を持っていることが多いです。そのため、介護職自身も高齢者に対して「無理をしないで」「穏やかに生活をしてほしい」と思いがちですが、可能性を広げる希望的な視点も必要になります。例えば、料理好きな方が脳梗塞で倒れて片麻痺になっている場合、料理することをあきらめてしまいがちですが、ある程度のサポートがあれば料理を行うことができます。切るだけ、炒めるだけ、盛り付けるだけでもできるのです。「〇〇だからできない」と思うのではなく、残存機能をしっかりと見極めてできることを模索する、可能性を広げる介護も大切です。
多職種連携での仕事
介護が必要な高齢者には様々な職種がかかわっています。介護職以外にもケアマネジャー・医師・看護師・理学療法士などがかかわり、多職種で支えています。良い介護を提供するため、良い生活を送ってもらうためには、多職種が連携を取ることが必要になります。多職種連携を行うためには、それぞれの役割を理解しておくことが必要になり、介護職の役割についても知っておくことが重要になります。介護職の役割は生活の支援です。医師や看護師は医療、理学療法士はリハビリなどそれぞれ役割が決まっています。介護職は生活に密接する職種ですので、生活の視点から気づいたことを他職種に共有をしていくことが専門性を発揮できます。
高齢者介護のポイント
高齢者を介護する際のポイントとはどのようなものがあるのでしょうか。大原則としては高齢者の特性や、高齢者の社会的な状況などを把握しておくことがポイントであるといえます。特に高齢者が置かれやすい状況を知ることによって、高齢者の心理的な負担などを知ることができますので、より高齢者に寄り添った介護を行いたいのであれば是非知っておきましょう。孤立しやすい、プライドは残っている、思いが言葉に出ないなど様々なポイントがありますので、それぞれ具体的に見ていきましょう。
ひとり暮らしの高齢者は孤立しやすい
高齢者の独居世帯は年々増加しており、社会的にも問題になっています。高齢者の一人暮らしの問題点としては、社会との接点の減少です。通常の高齢者でも社会との接点は少なくなる傾向がりますが、特に介護が必要な、身体の弱った高齢者の場合は、社会との接点が極端に少なくなってしまいます。例えば、ヘルパーとして一人暮らしの高齢者を支援する場合、そのような状況に陥っていないのか注意してみておき、もし社会との接点が極端に少ない場合は、会話などを通してコミュニケーションを図ったり、ケアマネジャーと連携をとりデイサービスを紹介するなどの方法もあります。
心身は衰えても、プライドは残っている
介護が必要な方を介護していると、どうしても介護職の方が上に立って、高齢者は言いたいことも言えないような状況に陥りがちです。高齢者はされるがままではなく、きちんとプライドをもって生活をしていますので、例えば自宅の掃除でも気を付けてもらいたいこともあるでしょうし、触ってほしくないところもあるはずです。介護職としてはそういった心理を理解して、都度確認しながら掃除をするなどの配慮が必要になってきます。
表に見えない心の動きまで、読み取る努力が必要
表にあらわれる心の動きは言葉で表現されます。言葉があれば相手の心理を理解することができますが、言葉だけにとわれれるのは充分ではありません。表に出ない心の動きにも着目して対応するようにしましょう。表情やしぐさなど、きちんと相手の顔を見て読み取ることが必要になります。高齢者の心理としては、自分のことを手伝ってくれる介護職に対して感謝をしており、自分の思いを伝えるのは申し訳ないと思っている場合もあります。その心理を介護職は理解しないといけません。高齢者の思いを尊重するためです。
介護職で働くことを考えている方へ
医療と介護、看護師と介護士は比較されがちですが、医療の目的は病気の治療であり、介護の目的とは違います。介護の目的は高齢者に充実した生活を送ってもらうことが目的なのです。そのため、介護職が思う良い生活を押し付けるのではなく、高齢者の思いを尊重せずに正論で説得することもありません。高齢者の思いをしっかりと受け止めて、それを実現するためにどのような支援が必要なのか考えていくことが、介護職の専門性であるといえるのです。介護職として働こうと考えている人の中には、つらい仕事、しんどい仕事と思われる方もいるかと思いますが、実は、介護職は楽しい仕事です。それはただ単に介助を提供しているだけではなく、高齢者と共にその人との生活を考え、どうしたら充実できるのか考えていくからです。高齢者の笑顔が増えたり、活動的、行動的になることを支えることは、楽しく、それがやりがいに繋がるでしょう。オムツ交換や入浴介助を介護の主な仕事だと考えがちですが、本当の介護の仕事は高齢者の思いを少しでも実現できるように支えることです。